無料カウンター

マサトヰシグロシャムロック「G」@100年の共産党

グラビアアイドルのDVDをレビューしていくブログ。

吉木りさ「花姑」(I―ONE、監督:加納典譲)、「蜜密」(同、監督:中北直)

 なぜ私が現在のトップグラドルに位置する吉木りさのDVDを買ったことがなかったかについては、既に述べた。それでは逆に、なぜ今になって彼女の作品を購入することを決めたかということになるが、物理的には発行元のI―ONEのサンプル動画を見て判断したということである。
 要領を得ない話だが、これまで見た彼女の動画の数々と比べたうえで、かなり見どころが増えたように感じたということだ。露出は「セキララ彼女」シリーズよりもかなり下がっているが、尻の接写や四つん這いなどのポージングに意欲の跡が見えた。ここが購入を思い立った直接の決め手だ。一貫して吉木のDVDに否定的な態度を取ってきた私であるが、このまま「食わず嫌い」を続けるのはどうかというのもあった。
 そして同時発売した新作「花姑」「蜜密」を手に入れたという次第である。

 さて、視聴した結果であるが…結論から言えば、トップグラドルを名乗る上ではかなり厳しい内容だったと言わざるを得ない。

 まずは加納の監督で台湾ロケを行った「花姑」。冒頭のダイジェスト映像にはキレがあり、こちらとしては本編にぐっと期待を高めたものだが、その期待ははかなく裏切られたと言っていい。見終えてみれば、ダイジェストが一番良かったと思わされる、アレである。

 この作品の何がダメと思わされたかって、さあこれから盛り上がる展開だぞとこっちが構えているのに、ほぼブツ切りで終わってしまうチャプターが非常に多いことだ。
 チャプター6は、透ける素材の白キャミソールを着けた白下着姿の吉木がプールサイドで寝そべったり、洋間にたたずむ。洋間では円卓の上でローションをあお向けの胸や足にかけられる吉木。従来のIVならここからが本番というもの。アイドルが手ずからローションを体に塗り込みながら、四つん這いやM字開脚など次々とポージングを決めていくのが現代IVの王道だ。
 しかし吉木が、あお向けのままローションを愛撫しだしたところで画面はブラックアウト。台湾の街並みを歩く吉木の画面に切り替わってしまった。ここに私は大いなる違和感を覚えた。

 「これからというときにブツ切り」と感じさせるチャプターはこれにとどまらない。
 チャプター10では生音空間の中、花柄ビキニ姿の吉木が素手で体洗い。シャワーで体をすすいだ吉木が、カメラに尻を向けたまま浴槽に腰掛ける。今日のIVではここからセクシーショットを放つのが定番で、たとえば戸田れいの「願望図鑑」では尻を円を描くように回して浴槽に擦り付け、接写もあいまって迫力あるシーンを生み出している。さて吉木はどうするか…と思っていたら、ただ漫然と尻を向けているうちに画面がブラックアウトしてしまった。またもブツ切りだ。
 そしてラストに当たるチャプター12。ホテルの一室、紫のキャミ姿で目隠し、両手両足を拘束された吉木は謎の人物に氷水を垂らされ悶絶の表情を浮かべる。やがて拘束の解けた吉木は、ベッドの上でゼリー状の液体を口に運びながら挑発的な表情(目に力が入りすぎていてあまりセクシーさはない)を浮かべる。やがて四つん這い、あお向けで身もだえ始める。ここからはモデルがくねらせる体の下半身をみっちり追い、上半身ショットに移行(往復する場合も多い)するのがIVの定番であるが、カメラは吉木の上半身をとらえるだけで一向に下半身を映そうとしない。そうこうしているうちに、またも画面がブラックアウトになってしまった。

 まあ全くアイドルDVDで、これほど消化不良を感じる構成・演出を見たのは結構久しぶりな気がする。何だか1作品の収録時間が30〜40分だった、約10年前の(VHSもあわせて売っていたころの)IVを見たような気になりましたわ。
 サンプルやダイジェストで見たときは接写もポージングも良さそうに見えたが、本編になるとその辺は思いっ切り希釈化されてしまっている。ヨガポーズに次々とチャレンジするチャプター8などは、期待はずれの最たるものだった。尻を高く掲げてからの開脚などをしているのに、カメラは全くその開脚を追おうとしないのだから。ヨガのシーンもほかもそうだが、吉木の顔、そして胸元を取ることに撮影者側の意識が行っているように感じた。尻や股間の接写は皆無ではないが、カメラを向けても2秒も固定せずに上半身などへ移行するのが目立った。かつての池田夏希の作品群で、よく見られたパターンである。

 こうしたさまざまな不満は、中北の監督で都内において撮影した「蜜密」でも同様に感じることとなった。

 モデルの実力の高低にかかわらず、どのグラドルでも「地雷」的な内容はキッチリ避けてみせる。中北はその安定感ある演出で、ネット上でかなりの高評価を得ていた。私も一線級グラドル・原幹恵を撮った「しあわせのしるし」を観賞して、その確かな腕を感じ取っていたのだが、「蜜密」ではがっくりとうなだれざるを得なかった。
 「これからというときにブツ切り」感をまたも味わうことになってしまったからである。顕著だったのは、オフィス内を舞台にしたチャプター6。誰もいないオフィスで作業していた吉木が、営業帰りの同僚男性を迎える。「誰も帰って来ないね……ちょっとだけ、遊んじゃおっか」と切り出した吉木は服を脱ぎ、緑の下着姿になる。こちらとしては、いやがおうにも期待が高まるってもの。机に手をついて四つん這いか、それともソファーでひざを高く抱え上げて同僚を誘惑するか…。
 そんな視聴者である私のスケベ心は、あっさり打ち砕かれる。吉木はひとり乳液ボトルを取り出し、一人で体に塗り塗りしだすのだ。楽しんでいるのは、おまえだけかよ!! 私は画面にそうツッコまずにはいられなかった。

 吉木がホテルのベルガールにふんしたチャプター10も同様である。ある男性客の部屋に荷物を届けた吉木が、その客に襲われてしまうのだ。右足の自由をロープで奪われた吉木は、観念したかのように制服を脱ぎだす。何度となく持ち出している「IVの定番」的には、ベッドで悩ましく体をくねらせるコースのはずだ。しかしピンクの下着姿となった吉木が、窓際でちょこんと足を組むポーズをしただけでチャプターが終了してしまう。
 ラスト、チャプター12では白下着姿の吉木が高々と尻を掲げた四つん這いのポーズを取る。従来の中北なら、ここで吉木の後方に回り、まるで後背位のように見下ろす形で尻を接写するところだ。しかしそれは行われず、かろうじて横から尻を申し訳程度に接写しただけに終わってしまう。

 中北よ、おまえもか――作品を視聴し終えた私は、ジュリアス・シーザーカエサルの心境に到達していた。

 吉木のDVD作品群のクオリティーに対してある種のバイアスが私にかかっていたことは、前回の記事で書いた通りだ。しかしそれでも、ここまで裏切られる内容だったとはな…というのが率直な心情である。遠慮会釈なしに書けば、「木戸銭返せ」と思ってしまうような2作品であった(特に「花姑」)。
 たぶんそう思う原因を探せば、いろいろ推測は出てくるだろう。売れてしまったために事務所のNG水準が上がったとか、演出家サイドが及び腰になってしまったとか。ただまあ実際に作品を見た私からすれば、吉木のグラビア師としての腕が未熟であることも大いに関係していると思う。
 トップグラドルに何てことを!と思う方もいようが、売れ行きのよさとモデルの実力は決して比例するわけではない。当の吉木も、『アサヒ芸能』11月17日号インタビューで今回のDVD撮影の反省点を述べている。

 「今度発売するDVDではバスケをやりながら揺れているお尻や胸を撮るシーンがあったのですが、走るのに夢中になってしまい、お尻や胸を撮られていることをすっかり忘れてしまいました(笑)。本当はこういうのも意識してやるようにしなきゃいけないんですよね」(同誌77ページ)

 謙虚に振り返っているのはいいことだが、初めて彼女の作品を見た者としては、グラドルとしての粗がいろいろあるなと思った。DVDの作中で吉木自身が言っているが、彼女は体が硬いようである。よって四つん這いや開脚といったIVに必須であるポージングは、いまいちきれいに決まっていないように見えた。表情の出し方においても同様。「蜜密」のベルガールなどで顕著だったが、妙に目に力が入りすぎていて男心をくすぐるような妖艶な表情をマスターしきれていないように思えた。
 要するに、どこか素人くさいグラビアなのである。ファンから言わせれば、「だとしても、その素人くささがいいんだよ」という反論もあろうが、トップグラドルと言われる位置にいる以上は、先達のほしのあき熊田曜子小倉優子らが残してきたグラドルのノウハウをくみ尽くしてほしいというのが私の気持ちである。
 民謡の全国大会に入選した経歴、ボーイズ・ラブ漫画好きという趣味からイマイチ吉木という人物を測りかねている私だが、ぜひグラドル氷河期に終止符を打てるようグラビア技術の研さんに励んでほしいと思う。