実は今回の一連の記事を上げる前、倉持氏のインタビューに目を通した私がtwitterで「倉持氏の批判記事を書く」と呟いた際、当の彼女からリプが飛んできて、数回のやりとりをした。彼女のリプは以下の通りである。
@masa10ishi96 イメージDVDがグラビアアイドルにとって大事なものだから、だからこそ露出度の問題を一度考える必要があると思っているだけですよ。このまま過激路線が続いていって病んでいく女の子が増えるのを見たくないんです。
— 倉持由香@ グラドル自画撮り部部長 (@yukakuramoti) 2016年12月30日
@masa10ishi96 大手事務所所属者しかグラビアカテゴリーで取り扱われないのはとても悲しく思ってますよ。それ自体を良しとはしてません。ただ、この機会に露出問題を提起していくのがイメージDVD業界の存続の為にも大事ではないかということを言いたいのですが。。。
— 倉持由香@ グラドル自画撮り部部長 (@yukakuramoti) 2016年12月30日
(いずれも2016年12月30日の倉持氏のツイートから)
倉持氏の主張は、自身がAmazonのグラビアDVD大規模規制に賛同するのは、背景には露出問題で病んでいるグラドルがいて、その改善のためにやむなしということのようだ。その件に関しては、そのtwitterでのやりとりで私は「現場の実態改善と、一企業にすぎないAmazonの横暴とは分けて考えるべきだ」「Amazonのやり方は独裁と言うべき、ナチスのやり口に通じるもの」と彼女に伝えた。
グラビアDVDの露出度など演出上の問題に悩むグラドルは、確かに倉持氏の言うように少なくはないのだろう。ただそういう場合に必要なのは悩んでいるグラドルへのケアや現場の実態改善の取り組みであって、Amazonの有無を言わさない大規模規制でないのは明らかではないだろうか。
だってそうだろ。グラビアDVDの露出度に泣いているグラドルが実際にいたとしてだよ、その子たちがAmazonが大規模規制したのを聞いて「あー良かった、ストレスなくなりました」なんて喜んだのか。ないだろ。
そうした点から、Amazonの大規模規制なんてのは若手グラドルの救済には一切役に立っていないと私は考えている。
グラビアアイドルの待遇などについて、真実一郎氏のインタビューで倉持氏はこのように語っている。
──輝きを取り戻しつつあるグラビア界、来年はどうなると思いますか?
(倉持=引用者注)せっかくグラビア界がいい状況になってると思うので、グラビアアイドルがグラビアをもっと楽しめるような業界にしたいですね。たとえばお嫁さんに行くことになってグラビアをやめるときも、「楽しかったな~」って思ってもらえるような状況になるといい。
グラビアをもっと楽しめる業界にしたいと言う倉持氏は、露出度の激しく過激なグラビアDVDが若いグラドルの活動の妨げになっている…さまざまな言動をみてみれば、そういうことを言いたいのではないかと思う。
それは甘いよ。グラビアアイドルが楽しい職業たりえるかなんて、ハッキリ言ってありえないと断言させてもらう。
倉持氏は、Buzzfeed徳重辰典氏のインタビューで「グラビアアイドルを楽な職業だと思われたくない」といったニュアンスの発言をしている。ここから私は異議申し立てせざるを得ない。
グラビアアイドルという職業は、そもそもキツいんだよ。
考えてもみろ。全く親しくないようなカメラマンとかメイクとかスタッフの前で水着になって自身の肌をさらすんだぜ。ストレスかからんわけないだろうが。このストレスは水着の露出度とかアイス舐めなど演出の有無に関係なくかかると思うよ。
大原かおりという、当然倉持氏も知っているであろう名グラドルがいる。吉木りさや杉原杏璃、壇蜜が所属する芸能事務所フィットワンの所属。エキゾチックでおとなびたルックスと95cmのバストで1990年代後半のグラビアを彩った大原は、ゲスト出演した「ボキャブラ天国」でこういう発言を残した。
「胸を見られるのは嫌だ。でもこれで生活している」
この彼女の言葉を私は、約20年たった今でも感銘深く思い起こしている。本当は見せたくないが、仕事としてグラビアをやり抜く。そうしたグラビアアイドルという職業を務める上で貫くべきプライドが、大原の言葉から端的に表現されている。
そうした思いは、大原のみならずゼロ年代前半のグラビア界をけん引したイエローキャブ三人娘の小池栄子や佐藤江梨子やMEGUMI、ひいては倉持も憧れの存在だと公言するほしのあき、熊田曜子や井上和香など歴史に名を残すグラドルが共通して抱いてきたのではないだろうか。その意味で、倉持のいう「楽しかったな~」なんて思いでグラビアをやめるグラドルが増えてほしいなんて願望は「そらアンタ、お花畑すぎるんじゃない?」と言わせていただく。
また倉持は、Buzzfeed徳重氏、真実氏のインタビューで暴露系グラドルへのあからさまな嫌悪を口にしている。
徳重氏のインタビューでは、こうだ。
「倉持:グラドルの暴露本を吉沢さりぃちゃんが出したじゃないですか。ギャラ飲み(金銭をもらい、飲み会に参加すること)や枕営業があると書いたり。私はよくないなと思います。テレビ番組に出るときも、スタッフさんから『そういう暴露話できますか』と言われるから『誰々に口説かれました』『風俗店で働いているグラドルいます』『パパがいるグラドルいます』とか言ってしまう。
でもタレントって才能って意味じゃないですか。そういう暴露話をしなければ、テレビに出られないなら、それは、その人の才能じゃない。必死なのはわかるけど、代わりは利く。あきられたら使い捨てされる。私はそうじゃないように自分を磨きたい」
真実氏のインタビューでは、以下の通りである。
「──業界の裏側を暴露することで注目を浴びようとするグラビアアイドルも、相変わらずいますよね。グラビア業界を背負っている気概のない、トップランカーではない人ほど、裏側やスキャンダルを語りたがります。
(倉持=引用者注)なにが目的なんだろう。自分のことしか考えてないですよね。業界のことを考えるなら、グラビアアイドルという職業の地位を向上させたほうがいいですよね。暴露することでしか気を引けないのかな、って。暴露系の子には楽屋でもなにも話せない。こわいし。私は、グラビアアイドルがバラエティに出るときのパターンで、暴露話とか『芸人さんに口説かれました』とかで地上波に出るのをしたくなかった。誰かを傷つけて出ることはしたくなくて、なんなら自分を傷つける。自分の身を削って、尻を出しますと。身内の悪口とか毒舌キャラとか、そういうので呼ばれるようにはなりたくない」
まずここでは聞き手の真実氏に言いたいのだが「トップランカーでない人ほど、裏側やスキャンダルを語りたがります」と話しているが、真実さん。あんた手島優をトップランカーじゃないと思ってんの? と言っておきたい。
手島はグラビア界をAKBグループに食い荒らされていた2012年から13年ごろのグラビア冬の時代、ファンの男性と交際したなどテレビバラエティーで暴露して存在感を高めた。そのやり口は決してスマートではなかったが、過激な演出を一切求められないAKBグループと自身がたたき上げでのし上がったグラドルとの差別化に成功し、後の壇蜜、橋本マナミの大ブレークへの道を開いたものとして、私は手島の功績を無視してはならないと思う。
以上は聞き手の真実氏へ言いたいことだが、倉持氏には別に言いたいことがある。
倉持氏は真実氏のインタビューで、暴露話をするグラドルに対して「なにが目的なんだろう。自分のことしか考えてないですよね」「暴露系の子には何も話せない。こわいし」と口をきわめて侮蔑の言葉を並べ立てている。
それについては、おまえそれはないだろうとバカ殿のギャグじゃないが言わせてもらう。グラドルの地位を向上したいと言うのなら、まずその理想に沿って暴露話をするグラドルに「それはやめるべきだ」と諭すのが定石じゃないのかね。
しかし倉持は、名指しした吉沢さりぃはじめ本人なりに浮上のチャンスをつかむために暴露話をしているであろうグラドルに対して救いの手を差し伸べることなく、楽屋で何も話せない、怖いと言うことでさらなる彼女たちの孤立化を狙っているようにみえる。グラビアをやめるときに「楽しかったな~」と思ってもらえる業界にしたいんじゃないのかよ。
ハッキリ言って、倉持氏の「楽しかったな~」うんぬんは建前にすぎず、結局は自身の主張に沿わないグラドルは、AmazonのグラビアDVD大規模規制を契機にどんどん切り捨てますよと暗に主張しているように思えてならない…というのが、私の推測である。
倉持氏への批判は、まだ続きます。